コラム
「脳に直接働きかけるうつ病治療」は危険じゃないの?

はじめに
うつ病の治療法はいくつか確立されており、中には脳に直接働きかける方法があります。
脳への治療と聞くと、「危険性があるのではないか」「脳へ悪影響が出ないか心配」と不安を感じる方は少なくないことでしょう。
そこで今回は、脳に作用する治療法を4つ紹介し、それぞれの特徴について解説していきます。
治療法① 薬物療法
代表的な治療法として薬物療法が挙げられます。
薬物療法は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで症状の改善を目指す治療法です。
薬の種類によって、さまざまな症状の緩和が期待できます。
薬もいくつか種類がありますので、個人の体質やうつ病の重症度などを考慮しながら、適切なタイミングで最適な治療を行うことができます。
その反面、薬の効果が出始めるまでに時間がかかってしまうことや、吐き気や眠気といった副作用のリスクがあります。
また、服薬管理を自分で行う必要があるため、症状が落ち着いたことを理由に自己判断で服薬を中止してしまい、症状の再燃・再発を繰り返してしまうケースも多く見られます。
治療法② 精神療法
カウンセリングや認知行動療法といった精神療法もうつ病に有効な治療法とされています。
うつ病になりやすい人は、完璧主義であったり、「こうしなければならない/こうするべきだ」といった思考に囚われたり、自己評価の低さから他人からの評価を過度に気にしてしまう傾向があったりすることが多いです。
そのような、自分の「心のクセ」を知り、改善していくことで、ストレス場面に直面してもうつ状態になりにくい状態を目指していきます。
カウンセラーとじっくり向き合うことができるため、自分一人では気づくことのできなかった「新しい自分」に出会うことができます。
また、カウンセラーと二人三脚で問題を解決していくことで、生活の中での困り感を減らせるでしょう。
一方で、カウンセラーの熟練度や人としての相性によって効果が左右されること、1セッションあたり50分程度かかり事前予約が必要な場合が多いため時間的拘束度が高いといった側面もあります。
治療法③ 電気けいれん療法
次に紹介するのは電気けいれん療法と呼ばれるアプローチです。
電気けいれん療法とは、頭部に直接電気刺激を与えることで人為的に脳にけいれんを起こさせ、治療を行う方法です。
高い治療効果が確認されており、特に重度のうつ病で速やかで確実な治療が必要な場合に選択されやすく、寛解率(症状が落ち着き、発症前のような生活を送ることができる状態になる割合)は70~80%程度と高い割合を示しています。
しかしながら、全身麻酔をかけて行うこと、前日から絶食するため入院が必要であることなど、治療の負担が大きいという特徴もあります。
また、副作用として頭痛、筋肉痛、一時的な記憶障害が見られる場合もあり、5~8万治療回数に1回程度の頻度ではありますが、電気けいれん療法で患者さんが亡くなる可能性もあるため、この治療法を選択する際には、医師から治療についてしっかり説明を聞くようにしましょう。
治療法④ TMS治療
4つ目の治療法はTMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)です。
TMS治療は、脳の特定部位に磁気刺激を与え、脳機能の活性化または抑制を図ることで症状の改善を目指す治療法です。
電気けいれん療法とは異なり、脳の一部分にピンポイントで刺激を与えます。
薬物療法と比べて、副作用が少なく、また服薬管理をする必要もなく、治療を始めてから早期に効果を実感する方が多いです。
さらに、薬物療法による寛解率は約60%と言われていますが、TMS治療は薬物療法や精神療法で寛解に至ることのできなかった患者の約40%を寛解へ導いているとされています。
そのため、かなり高い治療効果が確認されています。
高い治療効果を得るためには、個人差もありますが、1週間で2~5回通院する必要があります。とはいえ、集中的に行うのは最初の10回程度であり、治療自体も20~30回程度で終了します。
また短期集中治療も可能なため、薬物療法や精神療法のように長期間の治療というわけでもありません。
そのため、人によってはあまり負担に感じないかもしれませんね。
最後に
今回は「脳に直接働きかけるうつ病治療」について、薬物療法、精神療法、電気けいれん療法、TMS治療の特徴を紹介しました。
どの治療法にも長所と短所があるため、どれを選択すればよいか迷ってしまうかもしれませんが、個々人の体質やうつ病の重症度などの要因で最適な治療方法は変わってきますので、うつ病に悩んでいる方は主治医とよく相談してみてはいかがでしょうか。
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参考文献
- 1.岩本崇志・和田健(2019)「身体的リスクのある患者への電気けいれん療法の施行」, 『総合病院精神医学』, 31(1), 22-30(2025/7/15参照)
- 2.中村暖・山田浩樹・岩波明(2014)「うつの薬物療法」, (精神疾患の診断と治療:最近の進歩), 『昭和学士会雑誌』, 74(6), 621-627 (2025/7/15参照)
記事監修
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梅田メンタルクリニック
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