コラム
うつ病治療で話題のTMS治療とは?メリット・デメリットについて詳しく解説

はじめに
憂うつな気分、喜びや意欲の減少、睡眠問題などの症状が生じる精神疾患であるうつ病。
かつては、休養や薬物療法、精神療法などが治療方法として採用されてきました。
現在では、脳神経学的な治療法としてTMS治療が選択肢に加わっています。
TMS治療は日本では2019年に保険適用になり、治療ができる病院やクリニックが増えてきています。
TMS治療について聞きなれない、よく知らないといった方は多いと思います。
いったいどのような治療なのでしょうか。また本当に安全な治療法なのでしょうか。
今回はTMS治療についてメリット・デメリットを含めて詳しく解説していきます。
TMS治療とは
TMS治療のTMSとは、「Transcranial Magnetic Stimulation」の略です。
TMS治療は日本語では「経頭蓋磁気刺激療法」といいます。
頭に専用の装置を設置し、その装置で脳の特定部位に磁気刺激を与え、活性化または抑制することで症状の改善を図る治療法です。
うつ病はストレスなどによって神経細胞間の働きや結びつきが弱くなることにより症状が生じると考えられています。
神経細胞は微弱な電気刺激でやり取りを行っているため、TMS治療で刺激を与えると神経細胞が活性化され、脳本来の機能が回復していくのです。
初めてTMS治療の話を聞いた方は「本当に効果があるのか?」「頭に電気を流すなんてなんか怖い」と懐疑的になるかもしれません。
しかしTMS治療はそれまで薬物療法や精神療法では治療することのできなかったうつ病患者の約4割を寛解(病気による症状がみられなくなる状態)に導いたという研究もあります。治療後の再発率も薬物療法よりも低いとされています。
また、冒頭でも説明した通り、TMS治療は保険適用になっています。これは公的な機関の審査・承認を経ていることの証明にもなりますので安全性も担保されています。
そんなTMS治療ですが、従来では治りにくかったうつ病を寛解させる以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。
またデメリットとしてはどんなものが挙げられるのでしょうか。次にTMS治療のメリット・デメリットを解説していきます。
TMS治療のメリット
TMS治療のメリットの1つに「副作用の少なさ」があります。
薬物療法では、人によって種類や程度は異なりますが、吐き気や眠気、だるさなどの副作用が出てしまいます。薬は長期間飲んでいく必要があるので、なかにはつらい思いを長期間する方もいらっしゃいます。
それに比べてTMS治療は副作用が少ないとされています。慣れないうちは頭痛や吐き気を感じる場合がありますが、次第に慣れていきます。アメリカではけいれん発作が副作用として報告されていますが、3万件から9万件に1件と確率的にはかなり低いです。万が一のけいれん発作が生じたとしても、TMS治療を行っている医療機関側もけいれん発作の可能性を想定して治療にあたっているので、迅速な処置を受けることができます。
また「治療の手軽さ」もメリットとして挙げることができます。
1回の治療は、一般的に3~30分程度で終わるため、仕事の合間や休みの日のちょっとした時間に治療を受けることができます。
医療機関によっては短期集中治療を行っている場合もあるため、数週間で十分な効果を得ることもできます。
TMS治療のデメリット
次にTMS治療のデメリットですが、「通院回数の多さ」が挙げられます。TMSで治療を行っていくには1週間に2~5回の通院を行っていく必要があります。
都市部ならTMS治療を行っている医療機関にすぐアクセスできますが、地方の場合は通院に大きな負担が掛かる可能性があります。
また、「費用が高くなってしまう」というのもデメリットの1つです。自由診療の場合は、一般的に1回あたり数千円~数万円ほどかかってしまう場合があります。
保険適用でTMS治療を受ける場合は、いくつもの基準をクリアする必要がありますので、「誰もが保険適用で治療を受けることができるわけではない」というデメリットもあります。
また基準をクリアできたとしても順番待ちになっていることがあり、治療を始めるまでに時間がかかってしまうこともあります。
最後に
今回はTMS治療について、概要とメリット・デメリットについて解説しました。
TMS治療はこれまでの治療法ではどうすることもできなかったうつ病患者にとって希望の光です。
聞きなれない治療法ですので、不安に感じたり二の足を踏んでしまったりする気持ちはよくわかります。
しかしTMS治療は安全性が認められており、治療効果も高いため、うつ病で悩んでいるなら、治療の選択肢に加えてみるのはいかがでしょうか。
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参考文献
- rTMS 適正使用指針作成ワーキンググループ (2024)「反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針」, 『日本精神神経学会 』(2025.6.15参照)
- 野田賀大(2016)「難治性うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)および磁気けいれん療法(MST)の臨床応用」, 『総合病院精神医学』, 28(2), 132-146(2025.6.15参照)
- David L Dunner, et al. (2014) “A multisite, naturalistic, observational study of transcranial magnetic stimulation for patients with pharmacoresistant major depressive disorder: durability of benefit over a 1-year follow-up period”, J Clin Psychiatry, 75 (12), 1394-1401(2025.6.15参照)
記事監修
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梅田メンタルクリニック
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