コラム

  • トップページ
  • コラム
  • 睡眠問題の背景には心の病気がある? ~睡眠障害とうつの関係について解説~

睡眠問題の背景には心の病気がある? ~睡眠障害とうつの関係について解説~

睡眠障害

眠りの乱れは“心のSOS”かも

「最近、夜なかなか眠れない」「逆にやたら眠ってしまう」。
こうした“眠りの乱れ”は、単なる生活習慣の乱れ以上に、心からのSOSであることがあります。
厚生労働省の調査によると、「睡眠による休養を十分とれていない者の割合」は平成21年の18.4%だったのに対して、令和元年は21.7%と増加しています(注1)。
つまり、「睡眠に問題がある」と感じている人は、決して“あなた一人”だけではないのです。そして、その背景には「単なる不規則な生活」だけでなく、“こころの不調”が潜んでいる可能性があります。
そこで今回は、不眠・過眠といった睡眠の乱れが、なぜうつ病などのメンタルヘルスの問題と結びつくのか、そしてその理由と背景をできるだけわかりやすく解説していきます。



うつで睡眠が乱れる理由をわかりやすく解説

なぜメンタル不調が睡眠へ影響を与えるのでしょうか。
実は睡眠問題が生じる原因にはいくつかの生理的な仕組みが関係しています。
心臓や呼吸、体温などは私たちの意思に関係なく調整されています。
これらはすべて「自律神経」と呼ばれる神経が正常に働いているから成り立っています。
この自律神経は、身体を活動的・興奮状態に切り替える「交感神経」と身体を休息・回復させるためにリラックス状態に切り替える「副交感神経」がバランスをとっています。
しかし、ストレスなどによってこの均衡が崩れることで、交感神経が優位になり続け、体が常に緊張し、眠れない状態が続くことがあります。
また、ストレスが高まるとコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが分泌され、この状態では脳や身体が覚醒しやすくなるため、自然な眠気が訪れにくくなります。
また、セロトニンなどの神経伝達物質が減ることで眠りのリズムが乱れ、睡眠の質が低下することもあります。
さらに、体内時計の調整がうまく働かなくなることも、うつ病と睡眠の乱れを結びつける大きな要因です。
体は本来、朝の光を浴びて覚醒し、夜の暗闇で眠気が高まる仕組みを備えています。
しかし、精神的な不調があると、このリズムがずれやすく、夜になっても眠気がこない、あるいは逆に日中に強い眠気が襲うといった状態が生じます。
こうした理由から、うつ病では「眠れない」という不眠型が多い一方で、「眠りすぎてしまう」という過眠型のケースもあります。
特に若い人や気分障害の一部では過眠が目立つこともあり、うつ病の睡眠障害は一つのパターンでは説明できません。
それぞれの背景に、脳や自律神経、ホルモンの不調などが複雑に絡み合っているのです。



放置すると起きる困りごと

睡眠の乱れをそのままにしてしまうと、さまざまな困難が積み重なっていきます。
まず、生活リズムが徐々に崩れ、起床時間や食事のタイミングがばらつき、昼夜逆転のような状態に向かうことがあります。
日中の活動量が減ることでさらに眠りが浅くなり、身体のだるさや疲労感が強まり、心身の調子がますます整わなくなるという悪循環が起こりやすくなるのです。
日常生活だけではなく、仕事や学校など社会生活への影響も深刻です。
不眠の場合、集中力や記憶力が落ち、判断ミスが増えたり、遅刻や欠勤が増えたりすることがあります。
一方で過眠の場合、朝起きられない、予定通り行動できない、やる気が湧かないなどの状態が続き、結果的に周囲の信頼を失ってしまうこともあります。
こうした負担は本人にとってつらいだけでなく、家族にも影響を及ぼすことがあります。
家事や育児に手が回らなくなったり、家族が心配を抱えて生活が不安定になったりするケースは珍しくありません。
また、会社の同僚や友人関係でも負担が増え、孤立感が強まっていくこともあります。
つまり、睡眠の乱れは「自分だけの問題」に留まらず、周囲の人々や生活全体に波及する可能性もあるのです。



今日からできる簡単なセルフケアをご紹介

では、睡眠に問題を抱えている場合、私たちはどうすべきなのでしょうか。
そんなときはまずは手軽に始められるセルフケアから始めてみましょう。
朝起きたら、まず朝日を浴びるようにしてみるだけでも、体内時計のリセットにつながり、夜の眠気が自然に訪れやすくなります。天気の悪い日でも窓際の明るさは効果があります。
夜は、就寝の1〜2時間前にぬるめのお風呂に入ると、体温の上昇と下降のリズムが整い、自然な眠気が訪れやすくなります。熱いお湯に入ると逆に覚醒することがあるため、心地よいと感じる程度の温度が適しています。
また、眠る直前のスマートフォンやパソコンの使用は、脳が覚醒しやすく、眠気が抑えられる一因となり、睡眠の質を下げる可能性があるため控えるようにしましょう。
そのかわりに軽いストレッチや深呼吸など体を緩める行動を取り入れると、入眠がスムーズになる人も多いです。
また、毎日およそ同じ時間に起きる、バランスの取れた食事を意識する、軽い運動を日中に取り入れるなど、日常生活のリズムを整える工夫も睡眠の質を安定させることが知られています。



相談すべきタイミングとは?

睡眠の乱れが2週間以上続き、仕事や学校、家事など日常生活に支障が出ていると感じるときは、早めに医療機関に相談することが勧められます。
気分の落ち込みや無気力、集中力の低下、これまで楽しめていたことを楽しめなくなるといった症状が併せて見られる場合は、うつ病などの可能性があるため、なおさら専門的な評価が必要です。
医療機関で治療の必要があると判断された場合は個人の状況に合わせていくつか治療方法が提示されることがあります。
具体的には以下の3つの治療法が用いられることが多いです。

薬物療法

薬を服用することで、脳の働きや体内リズムのバランスを整え、睡眠問題を解消していきます。
「寝付けない」「途中で目が覚める」といった場合には睡眠薬、「不安で眠れない」といった場合には抗うつ薬が処方されることがあります。
薬には副作用があるため、必ず医師の指示を守り、決められた時間に決められた量を服薬するようにしましょう。

心理療法

睡眠問題の背景には改善すべき生活習慣と睡眠に対する誤った思い込みが存在する場合があります。
それらに対して心の専門家である心理師との対話を通して「どうして寝付けないのか/寝すぎてしまうのか」「不安な気持ちに襲われるのはどんな時で具体的にはどのような内容なのか」を1つずつ言語化し対処していくことで、睡眠トラブルを解決していきます。

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)は、磁気の力で脳の活動を調整する先進的な治療法です。
薬物療法だけでは改善しにくいうつ病に対して、アメリカ精神医学会などでも推奨されており、日本でも保険適用治療として利用が広がっています。
TMS治療の仕組みは、弱い磁気パルスを使って、気分や意欲をつかさどる部分である前頭前野を刺激し、低下した脳活動を正常化するというものです。麻酔が不要で副作用も少ないため、身体への負担が少ない治療として注目されています。
睡眠面でも睡眠の深さや質が改善するケースが報告されており、高い効果が期待できるでしょう。



TMS治療



最後に

睡眠障害は自然に改善することは少なく、特に重症化したものは適切な医療を受けなければ、様々な方面に悪影響を及ぼしてしまいます。
医療機関への受診に対して気が重くなってしまう気持ちはよくわかりますが、早期介入が早期改善に繋がります。
少しでも睡眠に対して困りごとがあるのなら、ぜひ受診を検討してください。



初診の方はこちらから初診のご予約はこちらから

web初診予約

LINEでのご予約はこちらからLINEでのご予約はこちらから

LINE初診予約

※再診の方はお電話でご予約ください

0120-809-270(電話受付時間 10:00~19:00)


脚注
注1)健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会(2024)『健康づくりのための睡眠ガイド 2023』(2025.12.10参照)


記事監修

院長 初村 英逸

梅田メンタルクリニック
院長 初村 英逸

2009年大分大学医学部卒業。現在、梅田メンタルクリニック院長。精神保健指定医。
▶︎院長についてはこちら

トップに戻る