コラム
自律神経失調症・更年期障害・うつ病の違いと関係性について解説
なぜ「原因不明の不調」が起きるのか
「なんとなくだるくてやる気が出ない」
「疲れがとれなくてイライラする」
といった「身体や心の不調」で悩まされることはありませんか。
こういった不調は解決しようと思っても原因が思い当たらず、結局そのまま放置してしまう人も少なくありません。
ですが、これらの不調は身体からの「SOSサイン」であり、なんらかの病気が私たちの身体のなかでじわじわと進行している可能性もあります。
そこで今回は不調を引き起こす原因になりやすい、「自律神経失調症」「更年期障害」「うつ病」について、特徴や治療方法などについて解説していきます。
自律神経失調症・更年期障害・うつ病の特徴について
今回取り上げる3つの病気について、「名前を聞いたことはあるけどよく知らない」「なんとなく知っているだけで詳しく説明できない」という方も多いと思いますので、まずは簡単に病気について紹介していきます。
自律神経失調症
私たちにはリラックスしたときに働く「副交感神経」と運動したときやストレスを感じたときに働く「交感神経」というものがあり、この2つをまとめて自律神経と呼びます。
この自律神経は私たちの意思とは関係なく、呼吸や心臓の動き、体温、血圧など生命維持に必要な機能を自動的にコントロールしています。
自律神経がバランスよく機能することで「集中するとき」「ホッとするとき」のメリハリをつけて生活することができます。
しかし副交感神経と交感神経のバランスが崩れてしまうと「仕事中に集中できない」「寝る時にドキドキして緊張してしまう」などが生じ全身にわたって心身の不調を感じるようになります。この状態を「自律神経失調症」と呼びます。
更年期障害
また、自律神経の乱れは自律神経失調症だけで生じるわけでは限りません。
加齢とともに男性ホルモンや女性ホルモンの分泌量が急激に減少することで、自律神経が乱れ、イライラする、眠れない、身体のだるさや頭痛などの不調が生じてしまいます。
これが「更年期障害」です。
うつ病
最後にうつ病ですが、こちらについてはよくご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。
うつ病はストレスによる脳機能の低下、遺伝や性格などの様々な要因が複雑に影響しあうことによって発症すると考えられています。
症状としては気分の落ち込みや興味・意欲の減少、疲れやすい、眠れないなど様々ですが、個人差が大きいとされています。
3つの症状が混同されやすい理由
自律神経失調症・更年期障害・うつ病は、いずれも「疲れやすい」「眠れない」「気分が落ち込む」といった共通の不調を伴うため、見分けがつきにくいのが特徴です。
さらに、どの病気もストレスやホルモンの変化、自律神経の乱れなど、原因が重なりやすい点も混同を招く原因となっています。
特に更年期障害ではホルモンの低下が自律神経の乱れを引き起こし、結果としてうつ症状が現れることもあります。
そのため、初期段階では本人だけでなく医師でも判断が難しく、複数の要因が絡み合って症状が現れるケースが少なくありません。
受診の目安
では、身体の不調を感じた場合、私たちはどうすべきなのでしょうか。
「最近調子が悪いな」と感じた際には日々の生活を振り返り、不調の原因について考えてみましょう。ちょっとしたことに気を付けたり、原因を取り除いたりすることで不調を改善できるかもしれません。
とくに原因が思い当たらない、もしくは原因を取り除くことが難しく不調が長引いてしまう場合は、早めの受診が大切です。特に日常生活に支障が出るほど集中力が落ちたり、仕事や家事が手につかなくなったりする場合は、心療内科や精神科、婦人科などの専門医への相談をおすすめします。
「こんなことで病院へいってもいいのかな……」と受診に対し消極的になってしまう気持ちがあるかもしれませんが、身体の不調には医療的ケアが必要不可欠です。
早めの受診と、症状に合った治療法の選択が、回復への第一歩となりますので、少しの不調でも迷わず受診してください。
治療の選択肢
受診後の治療の選択肢は、症状の原因や重症度によって異なります。
自律神経失調症では生活習慣の見直しやストレスケア、薬物療法、更年期障害ではホルモン補充療法(HRT)や漢方薬などが用いられます。
うつ病の場合は、抗うつ薬のほか、心理療法(カウンセリング、認知行動療法など)が中心になります。
近年では、薬に頼らず脳の機能バランスを整える「TMS療法(経頭蓋磁気刺激療法)」にも注目が集まっています。
TMS療法は、磁気によって脳の神経細胞を刺激し、低下した脳活動を回復させる治療法で、副作用が少ないのが特徴です。
薬の副作用が気になる方や、薬物治療だけでは改善が見られない場合の新たな選択肢として活用されています。
日常でできるセルフケアとは
最後にご自身でできる簡単なセルフケアについて紹介していきます。
心身の不調を和らげるためには、日々の生活の中で自律神経のバランスを整えることが大切です。
まず意識したいのは「睡眠」「食事」「運動」の3つ。決まった時間に寝起きし、栄養バランスの取れた食事をとることで、体内リズムを整えることができます。
また、軽いストレッチやウォーキングなどの適度な運動も、ストレス解消や血流改善に効果的です。
さらに、深呼吸や瞑想、ぬるめの入浴などで副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせましょう。仕事などでは「頑張りすぎない」意識を持ち、疲れたときは無理をせず休むことも大切です。
小さなセルフケアの積み重ねが、病気の重症化を防ぎ、より治療効果を高めることができるのです。
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参考文献
- 鬼頭伸輔(2023)「うつ病に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)」, (エビデンスに基づく経頭蓋磁気刺激(TMS)治療), 『The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine』,56(1), 38-43(2025.11.14参照)
- 日本女性医学学会(2023)『ホルモン補充療法の正しい理解をすすめるために:ホルモン補充療法を考えている方へ』(2025.11.12参照)
記事監修
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梅田メンタルクリニック
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