コラム

適応障害とうつ病の違いとは?

適応障害・うつ病


はじめに

私たちの心と体はストレスにさらされることで様々な反応を示します。
具体的には「気分の落ち込み」や「集中力の低下」といった心理的反応、「頭痛」「胃痛」といった身体的反応、「飲酒量や喫煙量の増加」といった行動的反応といったものが挙げられます。
たとえストレスを感じていたとしても、趣味に没頭する、家族や友人との談笑を楽しむことで、これらの反応を弱めることができますが、ストレス発散の機会や手段が少ない、またはストレスを大きく感じやすい人は「適応障害」や「うつ病」といった心の病になってしまう場合があります。

適応障害とうつ病は症状がよく似ていますが、実は全く異なる病気です。
今回は適応障害とうつ病について紹介していく中で、それぞれの病気の違いについて解説していきます。



適応障害とは

適応障害とは、環境の変化などで生じるストレスに対応できなくなり発症する病気を指します。
具体的には「育児や介護に追われている」「仕事が忙しく余裕がない」「授業についていくだけで精一杯」などといった負荷がかかっている中で、つらい出来事や悲しい出来事からストレスが生じ、心と体のバランスが崩れることで適応障害が発症すると考えられています。

主な症状として、憂うつな気分や不眠などが挙げられていますが、それ以外にも「少しのことでイライラする」「常に緊張していてリラックスできない」といったものがあります。
症状に関しては個人差が大きく、人によっては出ないもしくは強く出てしまう症状があります。

治療としては、休養、薬物療法、精神療法があります。
まずはストレスの原因から離れ、ゆっくりと休むことが大切です。
症状が重く、休みを取ることが難しいようなら抗不安薬や抗うつ薬といった薬をうまく活用しながら精神面の安定を図っていきます。
それと同時に、社会復帰後に適応障害を再発しないよう、認知行動療法やカウンセリングを受け、ストレスへの対処法や自分自身について知ることが大切です。



適応障害の詳細はこちら



うつ病とは

うつ病はストレスや性格、遺伝子など複数の要因によって発症する精神疾患です。
うつ病については、いまだ解明されていない部分が多く、現在有力な説としては、様々な要因によって脳内伝達物質である「セロトニン(心の安定を保つ)」や「ノルアドレナリン(集中力ややる気を高める)」の量が低下し、バランスが崩れることでうつ病になるというものがあります。

うつ病の基本的な症状としては、強い抑うつ気分、興味や喜びの低下、食欲の減少もしくは増加、睡眠障害、そして希死念慮(「死にたい」という思い)が挙げられます。

うつ病の治療には適応障害と同様に休養、薬物療法、精神療法があります。
うつ病には症状が強く出やすい「急性期」、症状が落ち着き以前の暮らしに戻っていく「回復期」、継続的な治療や生活習慣の改善を続ける「再発防止期」という3つの期間があり、それぞれに合わせて治療を行っていきます。
急性期には休養と薬物療法が特に重視され、回復期と再発防止期には精神療法と継続的な薬物療法が重視されます。



うつ病の詳細はこちら



適応障害とうつ病の違い

ここまで適応障害とうつ病について解説してきました。
どちらも発症にはストレスが大きく関係しており、主な症状も似ているため、同じ病気だと誤解してしまうのも仕方ないのかもしれません。
しかし両者にははっきりとした違いが2つあります。

①原因がはっきりしているかどうか

適応障害は明確なストレス因によって発症します。
「職場で嫌なことがあった」「勉強が分からないから学校に行きたくない」など、精神的に不安定になる要因がはっきりとしているため対策が立てやすいです。
それに対してうつ病は様々な要因から発症につながるため何が原因なのかがつかみにくく、1つの原因を解決したとしても改善につながるとは限りません。
また本人が自覚していない要因も考えられるため対策や改善策を立てにくい特徴があります。

②原因から離れた時に症状が続くかどうか

また、適応障害はストレス因から離れることでおおよそ6か月以内に症状が改善されますが、うつ病の場合は休職などで環境を変えたとしても症状が改善するとはかぎりません。これにはうつ病によって脳の構造と機能に変化が生じてしまうことが関係しています。
うつ病を発症すると、記憶や感情を司る部位である海馬が委縮する、感情制御にかかわる前頭前皮質の機能が低下する、恐怖や不安を司る扁桃体が過剰に活動するといった変化が見られます。
そのため短期間での治療では寛解(おおむね2か月以上症状が認められない状態)に至ることは難しく、たとえ寛解したとしても負荷がかかりすぎるとうつ病が再発する可能性があるのです。



最後に

今回は適応障害とうつ病について、そしてそれぞれの違いについて紹介しました。
適応障害とうつ病は原因と症状が似ており、区別することは難しいですが、明確な違いがあります。
適応障害は原因がはっきりしており、原因を取り除くことで症状が改善しますが、うつ病はそうはいきません。
どちらも放置していると重症化する可能性があり、適応障害に関してはうつ病へと発展することもあります。
今回紹介した症状に心あたりのある方や心身に不調を感じている方は医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。



初診の方はこちらから初診のご予約はこちらから

web初診予約

LINEでのご予約はこちらからLINEでのご予約はこちらから

LINE初診予約

※再診の方はお電話でご予約ください

0120-809-270(電話受付時間 10:00~19:00)


参考文献
三村將・幸田るみ子・成本迅・新村秀人(2024)『公認心理師カリキュラム準拠 精神疾患とその治療』, 第2版. 医歯薬出版


記事監修

院長 初村 英逸

梅田メンタルクリニック
院長 初村 英逸

2009年大分大学医学部卒業。現在、梅田メンタルクリニック院長。精神保健指定医。
▶︎院長についてはこちら

トップに戻る